都内で救急出動が過去最多ペース　16年ぶり「インフル警報」で医療ひっ迫の危機

なぜ今？『16年ぶり』の警報が招く異常事態

季節外れの猛威、インフルエンザの早期流行

今回の救急出動急増の最大の原因は、例年より遥かに早く始まったインフルエンザの大流行です。東京都は2025年11月13日、患者数が一定の基準を超えたとして「流行警報」を発表しました。11月という早い時期での警報発令は、2009年以来16年ぶりという極めて異例の事態です。新型コロナウイルス禍での感染対策の緩和などが影響し、多くの人が免疫を持たない状態で流行期に突入したことが、感染拡大を加速させていると専門家は指摘しています。

数字が示す医療現場の悲鳴

この影響は、救急搬送の数字に顕著に表れています。直近1ヶ月だけで、発熱などを理由とする救急搬送は1万人を突破しました。これは、一つの都市で起きているとは信じがたいほどの数です。救急隊は休みなく出動を繰り返し、病院の救急外来は患者で溢れかえっています。この状況は、医療ひっ박の入り口に立たされていることを意味しており、医療従事者からは「すでに限界に近い」との悲痛な声も聞こえてきます。では、この危機的状況が続くと、私たちの身に一体何が起こるのでしょうか？

救える命が救えない？忍び寄る『サイレント・クライシス』

軽症者の利用が招く「救急車の渋滞」

問題の核心の一つが、救急車の不適切な利用です。「熱が出たが、どこの病院に行けばいいか分からない」「日中は仕事で病院に行けなかった」といった、緊急性の低いケースでの出動要請が増加しています。もちろん、本人にとっては不安な状況ですが、これらの出動が増えることで、いわば「救急車の渋滞」が発生します。限りある医療資源が、緊急性の低いケースに割かれてしまうのです。この「渋滞」が、本当に一刻を争う重症患者の命を危険に晒しています。

心筋梗塞や脳卒中…1分1秒を争う人への影響

本当に救急車を必要とする重症患者への対応が遅れるリスクが、今、現実のものとなろうとしています。例えば、心筋梗塞や脳卒中は、治療開始までの時間が予後を大きく左右します。救急車の到着が数分遅れるだけで、助かる命が助からなくなったり、重い後遺症が残ったりする可能性があるのです。自分や家族がもしもの時に、近くの救急車がすべて出払っていたら…これは、もはや他人事ではありません。静かに、しかし確実に、私たちの命を脅かす危機「サイレント・クライシス」が進行しているのです。この危機的状況を乗り越えるために、私たちにできることはあるのでしょうか？

あなたの判断が命を救う！今すぐできる『#7119』活用術

迷ったら、まず電話。救急相談センターとは？

この危機を乗り切るための「切り札」として、東京消防庁が強く利用を呼びかけているのが、救急相談センター「#7119」です。これは、急な病気やケガで「救急車を呼んだ方がいいか？」「今すぐ病院に行くべきか？」と迷った時に、電話で相談できる窓口です。医師や看護師、トレーニングを受けた相談員が24時間365日体制で対応し、症状に基づいた緊急性の判断や、受診可能な医療機関の案内を行ってくれます。スマートフォンや固定電話から「#7119」をダイヤルするだけで、専門家のアドバイスが受けられるのです。

「#7119」が多くの不安を解決する

実際に、救急車を呼ぶべきか迷った人の約8割が「#7119」への相談で不安を解消し、自己解決に至っているというデータもあります。これは、「#7119」が不要な救急出動を減らし、本当に救急車を必要とする重症患者のために救急車を確保する上で、極めて重要な役割を果たしていることを示しています。突然の体調不良でパニックになりそうな時こそ、一度冷静になり「#7119」に電話する。そのワンクッションが、自分自身を助け、ひいては社会全体の医療資源を守ることにつながるのです。

かかりつけ医や地域の診療所も選択肢に

もちろん、「#7119」だけが答えではありません。日頃から相談できるかかりつけ医を持つことや、地域の夜間・休日診療所の場所を事前に確認しておくことも重要です。特にインフルエンザのような症状であれば、多くの場合、地域のクリニックで対応が可能です。救急車は「最後の砦」であり、タクシー代わりではありません。私たち一人ひとりが医療機関を適切に使い分ける意識を持つことが、医療ひっ迫という大きな波を乗り越える力となります。

今後の焦点は？ 私たちの行動が未来を変える

都内の救急出動は、16年ぶりのインフルエンザ流行により、過去最多ペースで増加する異常事態に陥っています。このままでは、救えるはずの命が救えなくなる「医療崩壊」が現実になりかねません。今後の焦点は、年末年始にかけて予想されるさらなる感染拡大の波を、社会全体でどう乗り越えるかにかかっています。鍵を握るのは、私たち一人ひとりの『適切な判断』と『賢明な行動』です。迷ったらまず「#7119」に相談する。その一つの行動が、医療現場の負担を減らし、重症患者に救急車を届けるための道を開きます。あなたと、あなたの大切な人の命を守るために、今、何ができるかを考えてみませんか？