クックパッド2025年食トレンド大賞発表！「せいろ」が1位になった意外な理由

なぜ今『せいろ』なのか？驚きの選出理由に迫る

毎年の食卓を映す『食トレンド大賞』とは

毎年、年末に発表されるクックパッドの食トレンド大賞は、単なる人気料理ランキングではありません。レシピの検索データやユーザーアンケートなど、膨大な情報から社会の動きや消費者の価値観の変化を読み解き、次の年の食卓の動向を予測するものです。そのため、食品メーカーや小売業界からも「時代の羅針盤」として大きな注目を集めています。この大賞を見れば、世の中が今、何を求めているのかが見えてくるのです。そして今年、その羅針盤が指し示したのは、予想外にも伝統的な調理器具でした。

大賞は『ワンプレートせいろ』に決定！

数ある候補の中から2025年の大賞に選ばれたのは「ワンプレートせいろ」。これは、せいろで調理した肉や魚、野菜などを、そのまま食卓に出すスタイルを指します。調理・配膳・片付けが一度に済むという手軽さが、最大の評価ポイントとなりました。せいろ一つで主菜と副菜を同時に調理でき、油を使わないためヘルシー。さらに、器を兼ねることで洗い物が減り、食後の負担も軽減されます。この手軽さと健康的なイメージが、多忙な現代人のライフスタイルに完璧にマッチしたのです。

では、この「せいろ」ブームの背景には、どのような社会の変化が隠されているのでしょうか？

時代のキーワードは『タイパ』と『ヘルシー』

時短を求める現代人の救世主『タイパ』

大賞選出の最大の理由は、現代社会を象徴する価値観、タイパへの意識の高まりです。共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化により、料理にかけられる時間はますます限られています。「せいろ」は、食材を切って重ねて蒸すだけ、というシンプルな工程で調理が完了します。火にかけている間は他の家事をしたり、自分の時間として使ったりできる「ながら調理」も可能です。この『究極の時短』が、タイパを重視する層の心を掴みました。単に時間を短縮するだけでなく、その時間を有効活用したいというニーズに応えた形です。

健康志向の高まりが後押しする『ヘルシー』

もう一つの重要なキーワードが「ヘルシー」です。健康への関心は年々高まっていますが、手間のかかる健康食は長続きしにくいのが現実です。「せいろ」を使った蒸し料理は、油を使わずに調理できるため、余分なカロリーを抑えられます。さらに、食材の栄養素が流れ出しにくく、素材本来の味や甘みを引き出してくれるという利点もあります。「手軽なのに、健康的で美味しい」という三拍子が揃っている点が、健康を気遣うけれど時間はかけたくない、という現代人のジレンマを見事に解決しました。この手軽な健康志向が、せいろ人気を不動のものにしたのです。

一方で、2位と3位には、また別の社会情勢が色濃く反映されています。そこから見えてくるのは、私たちの生活のもう一つの側面です。

2位と3位が映し出す、もう一つの現実

2位『麻辣湯』―外食ブームが家庭へ

大賞に続いた2位は、シビれる辛さが特徴の『麻辣湯（マーラータン）』でした。麻辣湯は、専門店が次々とオープンするなど外食で人気が爆発していましたが、その波が家庭料理にも到達しました。好きな具材と辛さを選べる楽しさや、スパイスによる発汗作用、野菜をたっぷり摂れるヘルシーさが人気の理由です。市販のスープの素が充実してきたことも、家庭での普及を後押ししました。外食のトレンドが家庭の食卓に影響を与えるという、典型的なパターンと言えるでしょう。食に「楽しさ」や「刺激」を求める気持ちの表れでもあります。

3位『かさまし料理』―物価高との静かな戦い

そして3位には、より切実な世相を反映した『かさまし料理』がランクインしました。これは、豆腐やもやし、きのこなどの比較的安価な食材を使って、肉料理などのボリュームを増やす調理法です。続く物価高騰を受け、食費を切り詰めたいという節約志向が背景にあります。これは、日々の食卓が経済状況と直結していることを示す象徴的な結果です。単なる節約だけでなく、栄養バランスを保ちながら満足感を得ようとする生活の知恵でもあります。食卓には、社会の経済状況が色濃く映し出されるのです。

では、この「タイパ」「ヘルシー」「節約」という流れは来年以降どうなっていくのでしょうか？クックパッドは、さらに未来の食卓も予測しています。

2026年、次に来るトレンドは？未来の食卓予測

新提案『一汁三菜ボウル』とは？

クックパッドは、2026年のトレンド候補として『一汁三菜ボウル』を挙げています。これは、丼もののように、ご飯、主菜、副菜、汁物を一つのボウルに盛り付ける新しい食事スタイルです。日本の伝統的な食事形式である「一汁三菜」の栄養バランスの良さを、ワンプレートで手軽に実現しようという試みです。「せいろ」と同様に、準備や片付けが簡単でタイパが良い点が特徴です。健康と手軽さを両立させたいというニーズは、今後も食生活の中心であり続けることを示唆しています。

伝統と現代の融合『フュージョン薬膳』

もう一つの予測が『フュージョン薬膳』です。薬膳と聞くと、特別な食材や手間が必要なイメージがありましたが、最近ではスーパーで手に入る身近な食材を使い、普段の料理に気軽に取り入れるスタイルが注目されています。例えば、いつもの味噌汁に体を温める生姜やネギを加えたり、カレーにスパイスを足したりするのもその一つです。伝統的な健康法を現代のライフスタイルに合わせてアップデートするこの動きは、よりパーソナルな健康管理への関心の高まりを反映しています。

新設された『今年の顔』が示すもの

さらに、今年から食文化の発展に貢献した人物を表彰する『今年の顔』という部門が新設されました。これは、料理という行為だけでなく、それを取り巻く文化や人々の営みにも光を当てようという意図が感じられます。食のトレンドが、単なるレシピの流行から、ライフスタイルや価値観を表現する手段へと進化していることの表れと言えるでしょう。食を通じて社会とどう向き合うか、という視点が今後ますます重要になっていくのかもしれません。

私たちの食卓はどう変わる？トレンドから読む未来

2025年の食トレンド大賞は、「せいろ」という意外な結果を通じて、現代人が求める「タイパ」「ヘルシー」「手軽さ」という価値観を浮き彫りにしました。同時に、物価高という厳しい現実も食卓に影を落としています。鍵を握るのは、これらのニーズをいかに賢く、そして楽しく満たしていくかという点です。未来の食卓は、ただ空腹を満たす場所ではなく、限られた時間の中で心と体の健康を育み、日々の生活を豊かにするための戦略的な拠点となっていくでしょう。果たして、あなたの次の食卓には、どんなトレンドが上るのでしょうか？