27卒学生の75%が支持。採用の新常識『D&I』で企業を選ぶ時代に

なぜ今『D&I』なのか？驚きの調査結果が示す新常識

株式会社学情が実施した調査は、採用市場におけるゲームチェンジの始まりを告げるものでした。これまで「あれば良い」とされてきたD&Iへの取り組みが、今や学生にとって「なくてはならない」必須条件に変わりつつあるのです。この変化の大きさを、具体的な数字から見ていきましょう。

4人に3人が「好感が持てる」という衝撃

調査結果は衝撃的です。2027年3月卒業予定の大学生・大学院生の75.0%が、D&Iを推進する企業に「好感が持てる」と回答しました。これはもはや、一部の意識の高い学生だけの話ではありません。大多数の学生が、自分とは異なる背景を持つ人々が尊重され、共に働く環境を肯定的に捉えていることを示しています。多様性を受け入れる企業文化が、次世代の働き手にとってのスタンダードになりつつあるのです。この数字は、企業の採用担当者や経営者にとって、決して無視できない重みを持っています。

志望度を左右する「決定的な要因」に

「好感」だけではありません。D&Iは、学生の具体的な企業選びの行動に直結しています。調査では、学生の半数が就職活動で企業のD&Iに関する取り組みを「意識する」と答えました。さらに驚くべきことに、6割を超える学生が、企業のD&Iに関する考え方を知ることで「志望度が上がる」と回答しています。これは、D&Iへの取り組みが、企業の採用競争力に直接的な影響を与えることを意味します。同じ業界、同じような待遇の企業が2社並んだ時、最終的に学生の心を掴むのは、多様性への真摯な姿勢なのかもしれません。

背景にあるZ世代の新しい価値観

なぜ、このような変化が起きているのでしょうか。その背景には、Z世代と呼ばれる今の学生たちが持つ、新しい価値観があります。彼らは、SNSなどを通じて多様な考え方に触れるのが当たり前の環境で育ちました。「個」が尊重されることを何よりも大切にし、画一的な働き方を良しとしません。また、ワークライフバランスを重視し、ハラスメントのない健全な職場環境を強く求めています。D&Iは、こうした彼らの価値観を実現するための土台そのものなのです。

では、学生たちは企業のD&Iの「何」を具体的に見ているのでしょうか？抽象的な理念だけでは、彼らの心には響きません。

理念だけでは響かない。学生が本当に見ている『3つのポイント』

学生たちは、企業のウェブサイトに書かれた美辞麗句を見ているわけではありません。彼らが求めているのは、具体的で、日々の働き方に直結する「生きた制度」です。調査結果は、学生たちのシビアな視点を浮き彫りにしました。

最重要ポイント：「働き方の制度・柔軟性」

学生が最も注目しているのは、「働き方の制度・柔軟性」でした。これは、多様な人材がそれぞれの事情に合わせて能力を発揮できる環境が整っているかを問うものです。例えば、リモートワークやフレックスタイム制の導入、育児や介護と両立できる支援制度などが挙げられます。画一的な働き方を強いるのではなく、個々のライフステージや価値観に寄り添う姿勢が、学生から高く評価されています。単なる「制度がある」だけでなく、それが実際に利用されているかどうかも、彼らはSNSや口コミを通じて見抜こうとします。

次に重視する：「従業員の満足度」

次に多かったのは「従業員の満足度」です。これは非常に重要なポイントです。なぜなら、制度がいくら立派でも、実際に働く社員が幸せでなければ意味がないからです。学生たちは、企業文化や職場の人間関係、社員のエンゲージメント（仕事への熱意）といった、数字には表れにくい部分を重視しています。企業の公開情報だけでなく、口コミサイトやOB・OG訪問を通じて、社員の「本音」を探ろうとします。社員が生き生きと働いている姿こそが、最高のD&Iの証明だと考えているのです。

見逃せない：「男女比率」というリアルな数字

そして、「男女比率」も上位にランクインしました。特に、管理職や役員における女性比率は、企業のジェンダー平等に対する本気度を測るバロメーターと見なされています。性別に関わらず誰もがキャリアを築けるチャンスがあるかどうか。その答えを、学生たちは具体的な数字の中に探しています。口先だけの平等ではなく、実績として示されているかが問われているのです。この視点は、企業の長期的な成長性やサステナビリティを見極める上でも重要な指標となります。

こうした学生の厳しい視線は、企業にとって大きなプレッシャーであると同時に、チャンスでもあります。この変化は、企業の採用戦略にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

採用の明暗を分ける。企業に突きつけられた『D&I』という課題

学生の価値観の変化は、もはや無視できない大きな潮流です。これからの採用活動において、D&Iは企業の明暗を分ける決定的な要素となります。企業は今、この現実とどう向き合うべきなのでしょうか。

優秀な人材ほど「多様性」を求める

D&Iは、単なる社会貢献活動ではありません。企業の成長に不可欠な経営戦略です。なぜなら、優秀な人材ほど、多様な価値観を持つ同僚と働くことで新たなイノベーションが生まれることを知っているからです。同質的な組織からは、新しいアイデアは生まれません。D&Iが進んでいない企業は、優秀な学生から「成長できない環境」「旧態依然とした組織」と見なされ、敬遠されてしまうリスクがあります。人材獲得競争が激化する中で、D&Iへの取り組みは、未来の成長を担う人材を惹きつけるための強力な武器となるのです。

「伝える努力」が鍵を握る

素晴らしい制度や企業文化があっても、それが学生に伝わらなければ意味がありません。企業には、自社のD&Iへの取り組みを積極的に、そして具体的に情報発信する責任があります。採用サイトで特集を組む、CSRレポートで具体的なデータを公開する、SNSで社員のリアルな働き方を発信するなど、方法は様々です。特に、実際に働く社員の声を通じて、「制度が形骸化していないこと」や「多様性が尊重される風土があること」を伝えることが極めて重要です。この「伝える努力」を怠った企業は、機会損失を被ることになるでしょう。

取り組まない企業が直面する深刻なリスク

一方で、D&Iへの取り組みを軽視する企業は、深刻なリスクに直面します。まず、採用市場で学生から選ばれなくなり、人材不足が深刻化します。さらに、社会的な評価が下がり、企業のブランドイメージが傷つくレピュテーションリスクも高まります。長期的に見れば、多様性の欠如は組織の硬直化を招き、変化の激しい時代に対応できなくなるでしょう。D&Iに取り組まないことは、もはや単なる機会損失ではなく、企業の存続そのものを脅かす経営リスクであると認識する必要があります。

これからどうなる？学生に『選ばれる』企業の条件

27卒学生の4人に3人がD&Iを支持するという事実は、採用活動のゲームチェンジを明確に示しています。もはやD&IはCSR活動の一部などではなく、企業の根幹をなす経営戦略そのものです。鍵を握るのは、理念を語るだけでなく、働き方の柔軟性といった具体的な制度として社員に還元し、その事実を透明性をもって社外に発信できるかにかかっています。あなたの会社は、これからの時代を担う若者たちに「選ばれる」準備ができているでしょうか？企業の真価が問われる時代が、もう始まっています。