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男性の育休取得率がついに7割を突破。しかし、共働きで子育てをする人の85.6%が「子どもを持つことに経済的な不安がある」と回答しています。制度は整ってきたはずなのに、なぜ不安は消えないのでしょうか?その最大の壁が、子どもの「急な発熱」という日常の突発事態だったとしたら…。これは、多くの子育て世帯が直面する、見過ごされがちな現実の物語です。
男性の育休取得率は年々上昇し、過去最高を更新し続けています。これは喜ばしい進歩です。しかし、その一方で、子育て世帯の負担感は依然として重くのしかかっています。その根底には、制度だけではカバーしきれない、2つの大きな壁が存在していました。
ライボの調査機関であるの調査で、驚くべき数字が明らかになりました。共働きで子育てをする社会人のうち、実に85.6%が子どもを持つことに経済的な不安を抱えているのです。その背景には、止まらないや、将来の教育費への懸念があります。「給料は上がらないのに、出ていくお金は増えるばかり」という声は、多くの家庭に共通する悩みでしょう。子育てには、食費や衣料費だけでなく、習い事や医療費など、予測しにくい出費も伴います。この経済的な基盤の不安定さが、精神的な余裕を奪い、両立の難しさに拍車をかけているのです。
そして、もう一つの大きな壁が、男女ともに「両立の最大の障壁」として挙げた「子どもの急な体調不良」への対応です。朝、元気だった子どもが保育園から「熱が出ました」と連絡が来る。これは、子育て中の誰もが経験する日常です。法律にはという制度がありますが、有給か無給かは企業の判断に委ねられており、また、頻繁に休むことへの職場への罪悪感も根強く残ります。「どちらが迎えに行くか」「明日の仕事はどう調整するか」――。この予測不能な事態への対応こそが、制度が整ってもなお残る最大のストレス源となっているのです。
経済的な基盤の揺らぎと、日々の予測不能な事態。しかし、問題は家庭や職場の中だけにとどまりません。社会のセーフティネットであるはずの保育現場でも、新たな課題が生まれています。
「数が過去最少に」というニュースは、子育て世帯にとって希望の光に見えます。しかし、その明るいニュースの裏側で、見過ごせない問題が深刻化していました。それは、「量」は確保されても「質」が追いついていないという、保育インフラの新たなジレンマです。
厚生労働省の発表によると、2023年4月時点での全国の待機児童数は2,680人と過去最少を更新しました。これは、保育所の増設など、長年の取り組みの成果と言えるでしょう。しかし、その一方で、保育の現場は深刻なに喘いでいます。低賃金や長時間労働といった労働環境の問題から離職者が後を絶たず、必要な数の保育士を確保できない園が増えているのです。保育所という「ハコ」は増えても、そこで子どもたちをケアする「人」が足りない。この状況が、次の課題である「保育の質」の低下に直結しています。
保育士一人あたりが見る子どもの数が増えれば、どうしても一人ひとりに向き合う時間は減ってしまいます。それは、安全管理の面でのリスクを高めるだけでなく、子どもたちの発達に重要な、きめ細やかな関わりを難しくします。結果として、「預けられても、本当に安心して任せられるのか」という新たな不安が親たちに生まれています。また、保育士の負担増は、園全体の行事の縮小や、保護者への連絡の遅れなどにも繋がりかねません。待機児童問題が解決に向かう一方で、保育の「質」の確保が、子育て支援の新たな焦点として浮かび上がっているのです。
では、こうした複雑に絡み合った課題を乗り越えるために、本当に必要なことは何なのでしょうか?制度の拡充だけではない、もう一つの重要な要素が見えてきます。
育休制度が整い、保育所の数も増えた。それでもなお残る両立の壁。その最後のピースを埋める鍵は、法律やインフラといった「ハード面」ではなく、職場の理解や文化といった「ソフト面」にあるのかもしれません。制度を本当に意味のあるものにする「空気」の作り方が、今、問われています。
男性が育休を取得しても、職場に「迷惑をかけている」という負い目があったり、復帰後に不利益な扱いを受けたりするが後を絶ちません。これでは、せっかくの制度も形骸化してしまいます。重要なのは、上司や同僚が「子育ては大切な仕事」と理解し、快く送り出し、温かく迎える風土です。「お互い様」という意識が根付いている職場では、育休取得者も安心して休むことができ、復帰後のモチベーションも高まります。この「空気」こそが、制度の利用率だけでなく、その質をも左右するのです。
先進的な企業では、育休を個人の問題とせず、組織としてサポートする仕組みを構築しています。例えば、育休取得者の業務をチームで分担する体制を事前に整えたり、を用意してキャリアの不安を解消したりする取り組みです。あるIT企業では、育休取得を推奨するだけでなく、取得した男性社員の体験談を社内で共有し、後に続く社員がイメージを持ちやすくする工夫をしています。こうした具体的な仕組みづくりが、支援的な「空気」を醸成し、誰もが気兼ねなく制度を利用できる環境を生み出しています。
最終的に、仕事と子育ての両立は、個人の努力や一企業の取り組みだけで解決できる問題ではありません。子どもの急な発熱に対応できるよう、(リモートワークやフレックスタイム制)を社会全体で普及させること。保育士の待遇を改善し、「保育の質」を国全体で担保すること。そして何より、「子育ては社会全体で支えるもの」という意識を、私たち一人ひとりが持つこと。個別の課題解決から、社会システム全体の変革へと視点を移す時が来ています。
男性の育休取得率7割超えは、間違いなく社会が前進した証です。しかし、その裏で85.6%もの世帯が経済不安を抱え、「急な発熱」という日常の壁に苦しんでいる現実もまた事実です。保育の「質」という新たな課題も浮上しています。鍵を握るのは、制度の利用をためらわせない「職場の空気」と、社会全体で子育てを支えるという「意識の変革」です。果たして私たちは、個人の努力に頼る社会から、誰もが安心して子どもを育てられる社会へと、本当に移行できるのでしょうか。その答えは、私たち一人ひとりのこれからの選択にかかっています。
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